世界史を学び、激動のコロナ禍を体験した現役高校生が伝えたいたった1つのこと。

私が伝えたいたった1つのことは

「歴史から学ぶ大切さ。」

です。

私はある高校のグループ授業で歴史に影響を与えた感染症を調べ、「感染症について」教科書別に記述されていることを比較しました。

そしてその授業を通して学んだことをブログに記したいと思い、このはてなブログを利用させて頂きました。

それではよろしくお願いします。

 

目次

 

第1章 歴史に影響を与えた感染症・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・●

第1節 ペスト・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・●

 第2節 天然痘・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・●

 第3節 スペイン風邪・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・●

 第4節 SARS・MERS・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・●

 第5節 新型コロナウイルス・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・●

 

第2章 科学技術の発展と感染症の克服・・・・・・・・・・・・・・・・・・・●

第1節 細菌とウイルスの違い・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・●

 第2節 感染症対策に貢献した人々・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・●

第1項 エドワード=ジェンナー・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・●

第2項 アレクサンダー=フレミング・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・●

第3項 ナイチンゲール・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・●

 第3節 現代の対策・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・●

第1項 日本のマスク・手洗いうがいの歴史と効果・・・・・・・・・・・・・・・・●

 

第3章 歴史的な感染症の比較考察・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・●

第1節 ・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・●

 

第4章 教科書記述の現状と提言・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・●

第1節 教科書に見られる感染症の記述・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・●

 

終章 まとめ・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・●

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第1章 歴史に影響を与えた感染症

 

 この章では、歴史に影響を与えた感染症について、特にペスト・天然痘スペイン風邪SARS・MERS・新型コロナウイルスを取り上げる。これらは、歴史的に影響力が高かったと考えられるものを筆者らが選出した。各感染症の発生・流行時期や地域を示したのが以下の図である。

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       図1 歴史的な感染症の流行時期・地域(筆者ら作成)

 

第1節 ペスト

 

・ペストとは何か?

ペストとは、ペスト菌の感染によって起きる感染症である。別名「黒死病」と言われ、感染者の皮膚が内出血によって紫黒色になることに由来する。主な症状として、発熱・脱力感・頭痛などがあり、感染後1-7日後ほど経過した後症状が表れる。

 

・ペストが歴史に与えた影響

ペストという病気がいつから人間社会での伝染病として成立したのかは、まだ明確にはわかっていない。紀元前の古代エジプトのペストが人類を苦しめていたという説が今わかる最も古い発症地域である。

1331年に中国大陸で発生したペストは、中国の人口を半分に減少させる猛威を振るった。その後、貿易ルートに沿ってヨーロッパ、中東、北アフリカに拡散し、およそ8000万人から1億人ほどが死亡したとされている。

流行時期は世界各地で異なっており、ヨーロッパでは1348年から1420年にかけて断続的に流行した。近年では、2004-2015年にマダガスカルコンゴ民主共和国タンザニアなどのアフリカ諸国で流行するなどの流行時期の違いがわかる。

流行地域は、主にアフリカの山岳地帯および密林地帯にはじまり、東南アジアのヒマラヤ山脈周辺ならびに熱帯森林地帯。中国、モンゴルの亜熱帯草原地域。北米南西部ロッキー山脈周辺。南米北西部のアンデス山脈周辺ならびに密林地帯などがあげられる。

 

・ペストへの対策と収束方法

感染の予防策として、ペスト菌保有するノミや、ノミの宿主となるネズミの駆除が挙げられる。また、腺ペスト患者の体液に触れないことや、患者部屋への立ち入りを制限し、患者との距離をとることが重要である。患者の 2メートル以内に接近する場合はマスク、手袋などの着用をしなければならない。

現在、ペストに対する有効なワクチンは存在しないので、早期に適切な抗菌薬を投与することが必要である。そのため、早めに抗菌薬を投与して死亡率を20%以下に抑えることが必要である。これが今わかる現在の収束方法である。

 

・出典

https://ja.wikipedia.org/wiki/%E3%83%9A%E3%82%B9%E3%83%88

  • ペストとは【2020/08/03】

https://www.niid.go.jp/niid/ja/kansennohanashi/514-plague.html

  • ペストの発症地域【2020/08/03】

https://wired.jp/2016/05/28/plague-village/

  • ペストの昔【2020/08/03】

https://www.terumo.co.jp/challengers/challengers/32.html

 

第2節 天然痘

 

天然痘とは何か?

天然痘(てんねんとう smallpox)は、天然痘ウイルス(Variola virus)を病原体とする感染症の一つである。疱瘡(ほうそう)、痘瘡(とうそう)ともいう。医学界では一般に痘瘡と用いられた。疱瘡は平安時代、痘瘡は室町時代天然痘1830年大村藩の医師の文書で初めて表記されたことに由来する。

紀元前より、伝染力が非常に強く死に至る疫病であり、感染した場合、肉眼で判別可能な症状が現れるため特定しやすい。発病および感染はヒトのみに限られ、さらに優れたワクチンが存在するといった、根絶を可能とする諸条件が揃っていた。このようにとても伝染力が強く人類を死に追い込めたが、根絶に成功した唯一の病気である。

主な症状として、急激な発熱(39 ℃前後)・頭痛・四肢痛・腰痛などで始まり、発熱は2 〜3 日で40 ℃以上に達する。小児では吐気・嘔吐、意識障害がみられる。発疹【ほっしん】は顔面、頭部に多いが、全身に見られる。ほかにも致死率が平均で約20%から50%と非常に高い[1]。感染は飛沫感染によるものでおよそ12 日間(7〜16 日)の潜伏期間を経て、急激に発熱する。このように症状が確認しやすかったため根絶できたと考えられている。

 

天然痘が歴史に与えた影響

牛痘ウイルスから徐々に遺伝子が脱落して天然痘ウイルスになったと推測され、アフリカの角と呼ばれるアフリカ大陸南東端の地域が発症地であると推定されている。

主にヒトヒト感染であったため、全体的な年齢層に流行し、世界各地で死者が急増した。現在のペルーにあったインカ帝国は1530年頃天然痘により滅亡した。また、現在のメキシコにあったアステカ王国では、スペインの征服者、コルテスが1521年に征服した際、スペイン軍はわずか400人の兵力しかいなかったが、連れてきた奴隷の中に、天然痘に感染していた人が混じっていたため、アステカ王国は滅亡した。

17世紀日本においては、この一世紀の間に4回に及ぶ流行の記録が見られる。流行拡大は、主に17世紀からのものが多く、1796 年にはイギリスで45,000 人が天然痘のために死亡していた。ほかにも日本では明治年間に、2〜7 万人程度の患者数の流行(死亡者数5,000〜2万人)が6回発生しており、世界では約33 カ国に天然痘は常在し、発生数は約2,000 万人、死亡数は400万人と推計されていた。このように流行地域は特定の場所ではなく、世界全体に広がっていた。

 

天然痘への対策と収束方法

天然痘ウイルスはアメリカとロシアのバイオセイフティーレベル(BSL)4の施設 で厳重に保管されている[2]

19世紀以降、イギリスのジェンナーが予防接種を開発し、欧州および全世界への予防接種の普及に努めた。第二次大戦後の1946(昭和21)年には18,000人程の患者数の流行がみられ、約3,000人が死亡しているが、緊急接種などが行われて沈静化し、1956(昭和31)年以降には国内での発生はなくなった。沈静化する方法として「患者を見つけ出し、患者周辺に種痘を行う」という、サーベイランスと封じ込め (surveillance and containment)作戦実行を実行した。その後、WHO は1980年5月天然痘の世界根絶宣言を行った。

 

・出典

https://www.niid.go.jp/niid/ja/kansennohanashi/445-smallpox-intro.html

https://ja.wikipedia.org/wiki/%E5%A4%A9%E7%84%B6%E7%97%98

  • ミイラからの天然痘ウイルス〔2020/07/27〕

https://www.primate.or.jp/serialization/105%EF%BC%8E%E5%A4%A9%E7%84%B6%E7%97%98%E3%82%A6%E3%82%A4%E3%83%AB%E3%82%B9%E3%81%AF16%E4%B8%96%E7%B4%80%E7%B5%82%E3%82%8F%E3%82%8A%E3%81%AB%E5%87%BA%E7%8F%BE%E3%81%97%E3%81%9F%EF%BC%9A%E3%83%9F/

  • 天然痘を患った人の画像〔2020/7/22〕

https://dolikyou.com/wp-content/uploads/2020/04/smallpox-victim.jpg

  • 致死率の比較資料〔2020/07/27〕

https://nishijima-clinic.or.jp/blog/2020/04/15/%E4%BB%8A%E5%9B%9E%E3%81%AE%E3%82%B3%E3%83%AD%E3%83%8A%E3%82%A6%E3%82%A4%E3%83%AB%E3%82%B9%E3%81%A8100%E5%B9%B4%E5%89%8D%E3%81%AE%E3%82%A4%E3%83%B3%E3%83%95%E3%83%AB%E3%82%A8%E3%83%B3%E3%82%B6/

  • 天然痘と歴史的出来事との関係〔2020/07/27〕

https://japan-indepth.jp/?p=51300

 

第3節 スペイン風邪

 

スペイン風邪とは何か?

スペイン風邪とは、1918年-1921年に世界各国で極めて多くの死者を出したインフルエンザによるパンデミックの俗称である。第一次世界大戦時に中立国であったため情報統制がされていなかったスペインでの流行が大きく報じられたことに由来する(スペインが最初の発生源という訳ではない)。

スペイン風邪の病原体は、A型インフルエンザウイルスH1N1亜型)である。ただし、当時はまだウイルスの分離技術が十分には確立されておらず、その病原体の正体は不明であった。スペイン風邪は、それまでヒトに感染しなかった鳥インフルエンザウイルスが突然変異し、受容体がヒトに感染する形に変化するようになったものと考えられている。つまり、当時の人々にとっては全く新しい感染症新興感染症)であり、ヒトがスペイン風邪に対する抗体を持っていなかったことが、パンデミックの原因になった。

 季節性インフルエンザは、感染後1~3日の潜伏期間のあと、突然の高熱と倦怠感、関節痛、腰痛、筋肉痛などの全身症状で始まり、少し遅れて鼻汁、咽頭痛、咳などの呼吸器症状が現れる。熱は38~39℃あるいはそれ以上にもなるが、通常3、4日で解熱し、1週間程度で自然治癒に向かうことが大部分で、比較的予後の良い経過をたどる。しかし高齢者や基礎疾患を持つ人は重症化することもある。

スペイン風邪も基本的には同様の症状だったと想像されるが、当時の記録を見ると、非常に突然の発症、チアノーゼ、血痰、鼻出血などの出血傾向が強調されている。死亡例の肺を解剖すると、血液の混ざった水分で肺が満たされた状態(肺水腫)や、細菌感染を合併した強い炎症の所見が見られたという。

 専門家によると、症状が回復しても脳にダメージを与え、1,2ヵ月間うつ状態が続き、物忘れや決断力の欠如などが起きることもあるという。

 

スペイン風邪が歴史に与えた影響

 1899年から1943年までのインフルエンザ死亡者の世代マップ(図1)を見てみると、1917年から1919年と1920年から1922年はスペイン風邪の影響を大きく受けているのがわかる。

 さらに世代マップを詳細に見てみると、男子では1917年から1919年においては21歳から23歳の年齢域で大きなピークを示したが、1920年から1922年には33歳から35歳の年齢域でピークを示している。男子では1917年から1919年と1920年から1922年との両期間で年齢ピークの位置が異なっているのに対し、女子ではいずれの期間においても、24歳から26歳の年齢域でピークを示している。また、女子のピークが男子に比べて高いこともわかる。

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図2 インフルエンザによる死亡者の世代マップ

スペイン風邪の3回の流行時期は以下の通りである。

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[1] 例えば、スペイン風邪と比較すると、スペイン風邪は1918年3月頃から1920年まで全世界で大流行し、当時の世界人口の1/3以上が感染、数千万人が死亡した。この時の致死率が2.5%と低いので天然痘の致死率がとても高いことが良くわかる。

[2] バイオセイフティーレベル(BSL)とは、細菌・ウイルスなどの微生物・病原体等を取り扱う実験室・施設の格付けである。

 

スペイン風邪の第一波は1918年の8月にアメリカとヨーロッパにて発生した。感染性は高かったものの、致死率はそれほど高くなかったとされている。しかしながら、1919年10月にフランス、シエラレオネアメリカで同時に始まった第二波は5.26%の致死率となり、しかも健康な若年者層においてもっとも多くの死がみられ、死亡例の99%が65歳以下の若い年齢層に発生したという、過去にも、またそれ以降にも例のみられない現象が確認されている。これは、第一波では感染せず、免疫を獲得できなかった者が、第二波で重症化し死に至ったと推測されている。また、これに引き続いて起きた、1920年の8月に第三波は、医師や看護師の感染者が多く医療崩壊した。こうして、一年のタイムスパンで3回の流行がみられたことになる。

 医療ガバナンス学会によると、1人の陸軍兵によってアメリカのカンザス州にあるファンストン駐屯地にインフルエンザが持ち込まれ、数千人が感染した。同州のフォートライリー駐屯地等、他の基地にも感染が広がり、アメリカ国内の陸軍駐屯地36箇所のうち20箇所以上で感染が起こった。その頃ヨーロッパでは第一次世界大戦が終盤にさしかかっていた。西部戦線を突破するため、兵力増強が図られ、4月から夏にかけて210万人の兵士がアメリカからヨーロッパの前線へ移送された。これは、アメリカ独立戦争当時にアメリカ=ヨーロッパ間を移動した人数の40倍もの規模である。史上 初めての大規模な人の移動により、同時にウイルスもヨーロッパ大陸へ渡り、イギリス軍・フランス軍でも罹患者が急増した。しかしこの時の死亡率は低く、大部分が数日で症状が消え、3日程度の発熱で回復することから、「三日熱」と言われた。

 被害を受けた人たちの大部分は、とても貧しい層の人たちであり、その多くの人は栄養失調状態であった。第一次世界大戦により、当時は世界人口のほとんどが劣悪な健康状態であり、高い人口密度に加え、衛生状態も悪く、衛生基準自体が低いことが当たり前の時代であった。それに加え、世界のほとんどの地域は戦争で弱っていた時代である。公的な物資は少なく、多くの国々がその資源の多くを戦争に使い切った後であった。

 

スペイン風邪への対策と収束方法

 患者の隔離、接触者の行動制限、個人衛生、消毒と集会の延期といったありきたりの方法に頼るしかなかった。多くの人は人が集まる場所では、自発的にあるいは法律によりマスクを着用し、アメリカのサンフランシスコ市では、マスク条例を制定し、公共の場所で咳やくしゃみをした人は罰金、投獄され、学校を含む公共施設はしばしば閉鎖され、集会は禁止された。患者隔離と接触者の行動制限は広く適用された。感染伝播をある程度遅らせることはできたが、患者数を減らすことはできなかった。このなかでオーストラリアは特筆すべき例外事例だった。厳密な海港における検疫、すなわち国境を事実上閉鎖することによりスペイン風邪の国内侵入を約6ヶ月遅らせることに成功し、そしてこのころには、ウイルスはその病原性をいくらかでも失っており、そのおかげで、オーストラリアでは、期間は長かったものの、より軽度の流行ですんだとされている。

 

・出典

https://ja.wikipedia.org/wiki/%E3%82%B9%E3%83%9A%E3%82%A4%E3%83%B3%E3%81%8B%E3%81%9C〔最終閲覧日2020年7月24日〕

https://www.cas.go.jp/jp/influenza/kako_02.html〔最終閲覧日2020年7月24日〕

http://www.tokyo-eiken.go.jp/sage/sage2005/〔最終閲覧日2020年7月27日〕

http://idsc.nih.go.jp/disease/influenza/pandemic/QA02.html〔最終閲覧日2020年7月27日〕

  https://data.wingarc.com/impact-of-spanish-flu-25690〔最終閲覧日2020年8月3日〕

  http://idsc.nih.go.jp/disease/influenza/pandemic/QA02.html〔最終閲覧日2020年8月3日〕

 

第4節 SARS・MERS

 

SARSとは何か?

SARSとは「重症急性呼吸器症候群」ともよばれ、SARSコロナウイルスによって引き起こされるウイルス性の呼吸器疾患である。また、動物が起源である感染症と考えられている。ウイルス特定までは、その症状などから、「新型肺炎」、「非定型肺炎」とも呼ばれていた。

SARSは、2002年11月16日に中国南部の広東省で非定型性肺炎の患者が報告されたのを発端に北半球のインド以東のアジアやカナダを中心に感染が拡大していった。感染経路は、飛沫および接触感染が主体とされるが、空気感染の可能性も多く含まれている。

最も一般的には、ヒト−ヒトの接触で伝播していると考えられている。また、ヒトで感染源となるのは有症者だけで、現在までのところ発症前の患者が感染源となったという報告は確認されていない。SARSの潜伏期は2〜10日である。症状として発熱、筋肉痛などがみられる。発症者の約8割はその後回復するが、約2割は集中治療を必要とする。

 

・MERSが歴史に与えた影響

SARSは、32の地域や国々へ拡大した。感染により世界経済は400億ドルの被害を被るなどの影響を受けた。2003年、WHOは全世界に向けて異型肺炎の流行に関する注意喚起(Global Alert)を発し、本格的な調査を開始した。その後、原因不明の重症呼吸器疾患として「SARS」と名付けた。

右図はSARS新型肺炎(コロナウイルス)の感染者を比較した図である。各色の線からわかるようにSARSは比較的緩やかに世界に拡大していった。

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SARSへの対策と収束方法

SARSの対策としての有効な治療法はまだ確立されていないが、患者の即時隔離、接触者の自宅隔離は有効な予防措置である。他にも予防策として手洗い、うがい、マスク着用、人混みへの外出を控えるなどがあげられる。

収束方法として、古典的な「隔離と検疫」対策を用いて収束がはかられた。その後、WHOは2003年7月5日にSARSの感染地域から、最後まで残っていた台湾を除外すると発表して、SARSの流行が事実上、終息したことを宣言した。

 

 

・MERSとは何か?

 MERSコロナウイルス(MERS-CoV)は、中東呼吸器症候群病原体コロナウイルスである。通称 MERSウイルス。イギリスロンドン2012年9月に初めて確認された。ヒトコブラクダ保有宿主(感染源動物)であるとされ、ラクダとの接触や、ラクダの未加熱肉や未殺菌乳の摂取が感染リスクになる。

 2003年に流行した重症急性呼吸器症候群SARS)の原因病原体であるSARSコロナウイルスとは近縁だが、異なる種類のウイルスである。

 感染後2~14日の潜伏期間のあと、発熱、せき、息切れなど呼吸器症状が現れる。下痢などの消化器症状を伴う場合もある。MERSに感染しても、症状が現われない人や軽症の人もいるが、高齢の方や糖尿病、慢性肺疾患、免疫不全などの基礎疾患のある人では重症化する傾向がある。中東地域からMERSの確定患者としてWHOに報告された者のうち、症状が悪化して死亡する割合は、約35%とされている。

 

・MERSが歴史に与えた影響

 輸入症例ではないMERSの確定患者の発生が認められた流行国は、中東地域の一部であり、具体的には次の7か国である。
 アラブ首長国連邦、イエメン、オマーンカタールクウェートサウジアラビア、ヨルダン このほか、ヨーロッパやアフリカ、アジア、北米、中東からも患者発生の報告があるが、これらの患者はすべて、輸入症例ではないMERSの確定患者の発生が認められた流行国への渡航歴のある人、又はその接触者であり、輸入症例であることが分かっている。

 MERSはSARSの時ほど、急速に他地域へは拡散しなかった。病原体の感染力の強さを表す基本再生産数という概念がありそれは1人の患者が何人の患者に感染させる可能性を持つか(2次感染者という)の数値で、その基本再生産数はMERS 0.8~1.3、インフルエンザ2~3、SARS 2~5、はしか16~21であり、たしかにMERSコロナウイルスの感染力は麻疹やインフルエンザよりも低い。

 

・MERSへの対策と収束方法

 石鹸による手洗いやマスクの装着、人の触る所の消毒などが予防となる。洗っていない手で、目や鼻や口などの粘膜に触らないようにする必要がある。

また、病人との接触は控えた方が良い。航空機などではサーモグラフィーによる体表温度スクリーニングが行われているが、MERS初期の発熱で38度以上の体温となることはそれほど多くなく、37.5度以上の体温上昇すらも起こらない場合のあることが確認されており、限界がある。家庭内でも密接接触による感染が起こりうるため、マスクをして2m以上距離を保つことが望ましい。

感染者一人当たりの再生産数(感染させた人数)の平均を一人未満にしなければ流行は収束しないため、感染者に対する接触者追跡調査(コンタクトトレーシング)や接触者の隔離が行われている。

  直近では、2019年12月1日から2020年1月31日までの2ヶ月間で、サウジアラビアでは19人が感染し8人が死亡、このほかカタールでも発生するなど、収束の見通しは全く立っていない。 

 

 

・出典

SARSについて

 https://www.niid.go.jp/niid/ja/kansennohanashi/414-sars-intro.html

https://note.com/ozeki90/n/n7874009f6854

https://www.forth.go.jp/keneki/kanku/disease/dis03_07ser.html

 

・MERSについて

http://idsc.tokyo-eiken.go.jp/diseases/mers/〔最終閲覧日2020年9月7日〕

https://ja.wikipedia.org/wiki/MERS%E3%82%B3%E3%83%AD%E3%83%8A%E3%82%A6%E3%82%A4%E3%83%AB%E3%82%B9〔最終閲覧日2020年9月7日〕

https://www.mhlw.go.jp/bunya/kenkou/kekkaku-kansenshou19/mers_qa.html〔最終閲覧日2020年9月7日〕 

https://www.maruzen-publishing.co.jp/info/n19784.html〔最終閲覧日2020年10月8日〕

https://ja.wikipedia.org/wiki/MERS%E3%82%B3%E3%83%AD%E3%83%8A%E3%82%A6%E3%82%A4%E3%83%AB%E3%82%B9〔最終閲覧日2020年10月8日〕

 

第5節 新型コロナウイルス

 

2019年から世界中で爆発的な流行を引き起こした新種のコロナウイルスによる感染症が、WHO(世界保健機関)によってCOVID-19(corona virus disease 2019)と発表された。

 

新型コロナウイルス感染症とは何か?

世界で最も早く確認され、流行のもととなった場所は、中国湖北省武漢市である。

「食べられるものは何でも食べてしまう」という文化のあるこの場所で、このコロナウイルスの起源といわれるコウモリを食べてしまい感染者があらわれた。そしてそこからヒトからヒトへと媒介され今に至る。では、ヒトからヒトへの媒介はどのようにして起こってしまうのだろうか。

感染経路としては、空気感染・飛沫感染接触感染があげられるが、主に飛沫感染接触感染である。まず、飛沫感染ではヒトのくしゃみや咳、つばなどをまたもう一人が口や鼻から吸い込んでしまった場合に起こる。さらにヒトは自らがくしゃみや咳をするとき大半は周りへの配慮のため手で押さえる。しかしその手で周囲にものに触れ、またその触れた所を他人が触れてしまうことで接触感染が発生する。

主な症状として、頭痛・発熱・疲労感・筋肉痛・味覚障害・嗅覚障害がある。しかしどれも程度に個人差があり、感染者の8割程度は軽症または無自覚である。さらに有効的であるというワクチンなどはいまだ開発されてないが治癒例も多数ある。感染し重症化リスクが高まるのは高齢者や持病を持つ人がほとんどを占めている。

 感染者は30代から50代が多くなっているが満遍なく広がっている。しかし、20歳未満ではその他年齢層に比べ感染確率が半分程度であると考えられている。また致死率は高齢になるほど高く上がっていく。

新型コロナウイルスによる感染症は世界各国で確認され、また感染者数も急激に増加していった。その原因の一つとして新型コロナウイルスの潜伏期間の長さが関係していると考えられている。

厚生労働省HPによると潜伏期間は1~12.5日(多くは5~6日)となっている。そこで身近な感染症のインフルエンザと比較するとインフルエンザは1~2日間である。この潜伏期間中でもコロナウイルスの感染力は変わらないため、症状の出ていない間に無自覚に他人に移し、自分自身がコロナウイルスの媒介を進めてしまう。よって感染拡大が抑えきれなくなってしまった。

 

新型コロナウイルスに対する世界の対策と成果

 世界各国それぞれの対策を行ったために、国ごとに対策の失敗・成功の差が大きく出てしまっている。

成功例とされているのは、スロバキアや韓国である。スロバキアでは国内初の新型コロナウイルス感染者が確認されてから9日後、国内すべての学校の休校、商業施設の閉鎖、そして空港の閉鎖を行った。これは世界で見ても異例の速さである。またその迅速な国の対応に従う国民とマスメディアを利用した呼びかけにより感染の拡大を比較的抑えられ世界からの称賛を浴びた。

韓国は新型コロナウイルス感染症に対して迅速かつ効果的な対策を行った。まず、新型コロナウイルスの流行が確認されてから約2週間の時点で累計42万人もの人がPCR検査を受けた。この数字は同じ時期の日本と比べ約13倍に当たる数字である。その結果無意識のうちに感染を拡大させていくということが減少した。また韓国では感染が確認された場合、感染者のスマートフォンやクレジットカードの使用履歴、街にある監視カメラの情報などを用いて感染されるまでの感染経路を把握できそれを公開する、というシステムを導入している。公開された情報を元に接触していた可能性のある人へ連絡をし、検査を受けてもらう、または2週間の自己隔離を促している。これはプライバシーの侵害だという声も上がっているが、多少のプライバシーの侵害は感染拡大防止のために仕方がないことだとしている。 このような対策は全世界が見習うべきだとされている。韓国の1日当たりの新規感染者数の推移をみると2月末から3月の初めは感染者が多くみられるものの、だんだんと感染の封じ込めに成功しているように見える。

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一方で、失敗と評価されているのが、スウェーデンである。スウェーデンでは、国民全体の集団免疫の獲得を目指した。ロックダウン(都市封鎖)は国民の権利を侵害している、誰も望まず不必要だ、といった考え方から行わなかった。しかしその結果100万人当たりの死者数が世界的に最高水準となり、感染者数も一向に減らず苦しい結果となった。  

 日本は新型コロナウイルスの発生源である中国に近いうえに、多くの中国人観光客を受け入れていたことを考えると、日本の死亡率の低さは奇跡的であるといわれている。日本のPCR検査を受けている人の少なさや、強制力の伴わない緊急事態宣言が他国からの視点では緩いと感じられているが、感染の拡大や死亡率を抑えられている、という面から注目を浴びている。

 

・個人の対策

 個人の対策として特に推奨されていることとして「三密」の回避、マスクの着用、手洗い・消毒の徹底があげられる。「三密」とは密閉、密接、密集のことでこまめに換気をしたり、室内などに多くの人が一度に集まらないようにしたりするといった対策

である。また新型コロナウイルスの拡大とともにソーシャルディスタンスという言葉をよく聞くようになった。これは日本語では社会的距離という。もし自分が感染していても無症状の場合、知らず知らずのうちに人に接触をしてしまうことがある。自分だけでなく相手への感染を防ぐために、ソーシャルディスタンスという考え方が提唱されました。

しかしソーシャルディスタンスでは、社会的な分断をイメージされてしまうため、最近ではフィジカルディスタンス(身体的距離)という言葉が推奨されてきた。

 

新型コロナウイルスが与えた社会的影響

まず、経済面での影響である。新型コロナウイルス感染症の拡大に伴い、自粛期間が設けられたため飲食業は休業やテイクアウトのみの営業を余儀なくされ大きく売り上げが落ち込み閉店する店も少なくない。また、遊園地,テーマパークなどは感染が確認されてから売り上げが、1ヵ月で約30%、3ヵ月で約98%マイナスとなった。

 しかし、反対に情報サービス業や、レンタル業では家の中にいる時間が増えたために売り上げはプラスとなり他の業種のようなダメージはなかった。

 テレワークの導入やネット通販の利用などにより、飛沫感染接触感染、さらには近距離での会話の対策を日常に定着させる「新たな生活様式」へと転換させていくことが今後さらに求められている。

次に、生活面である。日常生活が制限されたことによって普段の暮らしにも影響が出ている。生活者研センターによる日本国内でのアンケートによると、休日祝日の旅行やレジャーが以前に比べて減った人が70%を超え自粛に対する意識の高さが伺える。また、屋外での運動や自宅での運動時間が増え健康意識も高まりつつある。自宅にいる時間が増えたために家族とのコミュニケーションもふえ、いい影響も少なからず見られた。

一方で、新型コロナウイルス感染防止のための外出自粛によるストレス、またウイルスに対する過剰な警戒心から多くの社会問題が引き起こされている。例えば、非協力的と見えた他人を一方的に糾弾する「自粛警察」が広がった。飲食店への嫌がらせや県外ナンバーの車を威嚇するなどの問題行為である。身勝手な正義感を他人に押し付ける行為が多くみられた。

また、医療従事者に対する偏見や誹謗中傷もあった。母親が医療に携わっている子は保育園へ通うことさえ断られたケースもある。この点について厚労省は、「医療従事者等は、感染防御を十分にした上で対策や治療にあたっている。新型コロナウイルス感染症の対策や治療にあたる医療従事者等の子どもに対する偏見や差別は断じて許されない」と強く指摘し、各自治体の対応が急がれる。このほかにも、医療従事者に対して「入店の拒否」「タクシーの乗車拒否」などが生じている。

 

 

・出典

新型コロナウイルスへの各国の対策について

〔スロヴァキア〕

https://www.newsweekjapan.jp/stories/world/2020/05/post-93418.php

〔韓国〕

https://www.nli-research.co.jp/report/detail/id=64189?site=nli

https://www.nli-research.co.jp/report/detail/id=64275?site=nli

 〔スウェーデン

https://www.newsweekjapan.jp/stories/world/2020/06/1-157.php 

 〔日本〕

https://www.newsweekjapan.jp/stories/world/2020/05/post-93421.php

・個人の対策について

 https://www.clinicfor.life/articles/covid-012/

https://www.kantei.go.jp/jp/headline/kansensho/coronavirus.html

・社会的影響について

 https://gemmed.ghc-j.com/?p=33574

https://www.nikkei.com/article/DGXMZO62123960R30C20A7KNTP00/

 

次のブログで第二章を記させていただきます。